抜型とは

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抜型(ぬきがた)




ベニヤ板に刃物を埋め込んだもので、ダンボールを打ち抜く打抜機で使います。

抜型を使うことで、差込式のフタや変形したフタの加工や、アールをつけたり、
角の部分を変形させたり、ロック機構や指穴加工など、あらゆる形状を作ることが出来ます。

現在、みかん箱タイプの箱形状以外では抜型を使った加工が圧倒的に多いです。


左の写真は上差込下組式と呼んでいる形状の抜型です。

指掛穴の加工も施されています。

水色の鮮やかな色の部分はスポンジが両面テープで付いています。

打ち抜く時に刃物にダンボールが刺さったまま抜けなくなるのを防ぐためのもので、
打ち抜いた後、ダンボールを抜型から剥す役目をしています。


抜型は印版と異なり、展開された寸法全体の大きさが必要になるため、作り出すものの大きさに比例して抜型代金も高額になります。


抜型のベニヤに埋め込まれた刃物には、切り刃と罫線刃があります。


切り刃は文字通り、ダンボール板をカットする刃物で、作り出す形状の外周に沿って、もしくはくり抜く部分に使われます。

指でなぞると指が切れてしまいそうな鋭利な刃物です。

中には刃の部分に等間隔で隙間があいているものがあり、ミシン刃と呼んでおりますが、これはミシン目を作り出すための刃物です。

この隙間の間隔は使われ方や運搬方法を考慮して、その抜型を作る都度決めていきます。

数センチ間隔のものや数ミリ間隔のものまであります。

罫線刃は、段ボールを箱や緩衝材として組み立てる時に折る部分の線です。

刃とはいっても切れない刃物で、先が丸くなっています。

これを段ボール表面に押し付けて凹みを作り、力を入れるとその部分から折れるようになっています。


ところで抜型には平型と丸型があります。

平型(ひらがた)は文字通り平らなベニヤ板に刃物が埋め込まれた抜型で、
一般的にダンボールの抜型といえばこちらをイメージすることが多いです。

写真の抜型は両方とも平型です。


対して丸型はやや特殊になります。

ロータリーダイカッタと呼ばれる大きな輪転機に取り付けて使う抜型で、
輪転機のアールにあわせて湾曲したベニヤ板に刃物がついています。

アールがついていますので刃物もその伸び率に合わせて計算された位置に埋め込まれており、とても高価なものです。

抜型全体の大きさや刃物の種類や使う長さにもよるため、一概には難しいですが、十万円の単位の抜型になります。

また抜型全体が湾曲しているため、実は保管場所も沢山とり、管理が大変です。

一方、平型は小さいものでは数千円から、だいたい数万円の単位で作れますので、
よほどの大ロットで無い限り、平型を使った加工になります。


抜型の値段は、ベニヤの大きさと使う刃物の種類と長さによってきまります。

当然、大きくて線が沢山入った複雑な抜型が高くなります。

逆に小さく、単純な、例えば単純なパットの切断用の抜型は安くなります。


抜型のコストを考える上で注意する点は、ロット数による製品単価とのバランスです。


例えば先ほどの例で小さなパットを3000個作る場合を考えます。

その場合、例えば10個並べて一度で10個打ち抜けるような抜型を作れば、機械を通すダンボールは300枚で済みます。

しかしその場合抜型代が10個分のサイズで大きいですから高くなります。

逆に抜型代をケチって1個しか抜けないサイズの物を作れば、抜型代金は安く済みますが、
3000回機械を通す必要があり、手間がかかり工賃的なコストがかかり製品単価が上がってしまいます。

作る品物の大きさや作りやすさ、そして一度に作られるであろう数を考えて、
単価とのバランスを考慮して、何個一度に打ち抜くかを決定していきます。


ちなみにこの一度にいくつ作れるかという部分は「丁取」(ちょうどり)と呼んでいます。

例えば一度に10個打ち抜ける抜型は10丁取の抜型となります。


印版はこの10数年くらいで手彫りのゴム版から樹脂版に進化して、見た目の進化も激しいですが、
抜型は大昔からこの姿のままです。

しかし生産機械は進化してベニヤ板はデジタル出力からレーザー加工されて作られたり、
また刃物の種類やスポンジの性能など、また寸法精度も上がってきており、地味ながら抜型も
年々良いものが安く作られるようになってきています。